こんにちは、台北ナビです。今ナビは、台北県金山の山奥に来ています。ちょうど盆地になっているこの場所は、四方を山に囲まれ、後ろの山はすでに「陽明山国立公園」に指定されているというぐらい、それまた生き生きとした自然が目に入る癒しの地です。今日はこんな山奥で、せっせこ石鹸をつくりながら、「自然」、そして、「人間」に誠実に向かい合う人々に会ってきました。
ナビがこの石鹸とであったのは、約半年前。日本の友人とともに、いわゆる「ツアーで連れて行かれるお土産やさん」に入ったときのこと。実はナビは、そんなにお土産やさんが好きなタイプではないのですが、そのフロアの一角から、ぷーんとさわやかな香りが漂ってくることに気がついたのです。寄って行ってみると、他の売り物とは別格の「ナチュラルさ」を漂わせる石鹸コーナーが。その当時、大人ニキビに悩まされていたナビは、その香りに吸い込まれるようにひとつ購入。そしてその石鹸をお風呂場に置いておくと、まるで花が咲いたようなすがすがしい香りが漂うようになり、さらに、使うこと3ヶ月、ナビの肌荒れもかなり改善したのです。それからというもの、効果はどうであれ(個人差ありますから)、この値段で、この芳香作用があるなら!と、お土産として友人に勧め始めたところ、かなりの好評。ナビ読者の皆さんにも教えてあげたいなと思ったまでです。
ひょろっと細めの、40歳ぐらいのこの方が、社長の阿原さん。全然「社長」っぽくありません。とっても細かいところまで気配りができる方で、その日も一路道中、台湾の観光案内をしてくれました。でも仕事のクオリティはどこまでも上を目指し、仕事の将来設計は、台湾人では珍しく(?)、5年後、10年後先を見据えていました。そんな阿原さんですが、昔からひどいアトピーに悩まされていたんだとか。シャンプーや洗剤を使うと、すぐにその部位が真っ赤に腫れ上がってしまい、仕方なく自分で自然志向の石鹸を作らざるを得なかったというのが、阿原肥皂の発祥の由来です。
質素な工場に入ると、かわいらしい笑顔の大福様?お地蔵様の笑顔が。実はこれ、石鹸で作られているんですって。邪念のない、清らかなお地蔵様にぴったりの材料ですね。工場の中には、特別何か派手なものが祭られていたり、絵が飾られていたりそんなことはまったくなく、ただひとつ質素な石鹸の大福様と、入り口の「阿原」だけ。このブランドのコンセプト「簡単的幸福」をよくあらわしています。地域貢献もこの阿原肥皂の大きなテーマ。自然材料だけではなく、そこで働く行員も、この村の人を積極採用していました。工場内部には、約15人。皆さん、特に男性は、昔はまったく違うお仕事をしていたんだそう。このおじさんは昔漁師さん。漁がうまくいかなくて困っていたときに、この工場のお話をもらい、今では娘さんも一緒に工場で働いています。
薬草は農園での独自栽培ですが、一部買い付けの薬草もあります。使用前には左上の写真のこのように乾燥させています。その後、左下の写真のようにお湯で煮込み、しっかりエキスを抽出します。上の写真の大きな赤いビーカーは、台湾ヒノキのオイル。虫を寄せ付けなさそうな匂いがあたり一帯にぷんぷんします。この高級オイルと、石鹸の元になるパーム油、さらに薬草エキス・粉末エキス(緑豆粉・ヒヨコマメの粉末)・天然海塩などを、レシピ通りに調合させていきます。温度の調整もKEYなんだそう。一定温度を保ち、すべて同じ温度にした状態で、混合させます。
手前の黒いものが売れ筋のよもぎ(艾草)
出来上がってからさらに、出荷作業が始まります。阿原肥皂にはそれぞれにシンボルマークが押されているのですが、これらもすべて手作業ではんこ押しされます。まずは、プラスチックのパッドの中から、石鹸の大元を取り出し、規定の大きさに切り分けます。空気に触れた表面ときった中身の色のグラデーションがこの石鹸の特徴です。そして、切り分けられた一つ一つに、作業員がはんこを押していきます。そして出荷前梱包が始まりますが、すべて手作業で梱包が行われています。
こう並べると、まるで羊羹のような石鹸。化学薬品を使っていないので、とてもまずいですが、実は本当に食べても大丈夫なんだそうですよ。また防腐材も入っていないので、保存期間は約1年。生きているんですね。泥シリーズには、出産直後の女性専用の石鹸や、赤ちゃん石鹸なんかもありますし、衣服用石鹸もあり。台湾らしい成分として、「四神」「苦茶」「緑豆・ヒヨコマメ」なんてものも発見。漢方になれない人のファーストステップには使いやすそうです。石鹸の一番の売れ筋は艾草(よもぎ)。これは、阿原さんが初めて作った石鹸で、現在でも看板商品なんだそう。湿疹やアトピーに悩まされている人、体臭が強い人、に効果があります。ナビのオススメは檸檬。芳香作用は抜群で、石鹸が入っていた紙袋は、まだ檸檬の香りがぷんぷんするぐらいです。![]() |
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工場の奥で、おじちゃんたちが、泥んこ遊び・・・をしているわけではありません。この団子石鹸を、三つ串刺しにして、洗面所に掛けるという商品です。まさか、本当にひとつひとつ手で丸めているとは思いもしませんでした。 | ||

シーザーホテルのショップスタッフは個人的に「松木」をご愛用
こうして、大自然と人間の愛情から作り上げられた、まるで食べ物のような石鹸は、台北市内のシーザーパークホテル地下・誠品信義・誠品敦南・お土産やさんに専用売り場があります。きれいに並べられた石鹸を見ていると、他のメーカーの「オーガニックソープ」とあまり変わらないようですが、石鹸一つ一つがこの美しい山の中ではぐくまれ、愛情こめられ、一人ひとりの素手から作られていると知ると、たかがひとつの石鹸が、にわかにズシリと手に沈むような気がします。台北ナビでした。上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
スポット登録日:2009-03-18
スポット更新日:2015-10-13