原住民たちの文化&芸術&音楽に触れて元気をもらおう!
こんにちは、台北ナビです。
どこまでも続く青い空と海、緑に輝く山々……
人々の歌声が響き、犬や猫たちは気ままに居眠り……
雄大な自然に抱かれながら、ゆったりとした時間が過ごせる台東。そこで生きる人々の笑顔につられて思わず笑みがこぼれる、そんな場所です。しかし、彼らの笑顔の裏に、台風による甚大な被害と再建の道があったのをご存じでしょうか?今回、大自然と共に生きる原住民たちが暮らす村と彼らが集う場所を訪ね、元気をもらってきました。
さぁ、台東へ旅立ちましょう!

なぎ倒された木々や石を集めて建てられた頭目の家
穏やかに流れる太麻里渓に沿って山へと進んだ先にあるのが、「
嘉蘭集落」です。
ルカイ族やパイワン族が多く暮らすここは、彼らの言葉で「霧深く、木々が生い茂る場所を表す「Buliblosan」と呼ばれているとか。そんな自然豊かな村は、2009年の台風による災害(八八水災)が深刻で、家はもちろん大切な伝統衣装などもすべて流されてしまいました。当時、川は山からなぎ倒された木々で埋め尽くされ、下流を超えて太平洋までいっぱいになってしまったそう。心身のダメージが何より大きかったという集落の人々……。
彼らの心の拠り所である頭目(首長)の家や青年会所、集落広場は、今では伝統を受け継ぐ形で美しく建て直され、穏やかな風景を取り戻しました。人々が口にするのは、「台湾好基金会」を中心とした多くの協力者たちへの感謝の気持ち。故郷への愛が再建に力を貸してくれたと喜びます。
 頭目の家の中心にある立派な柱 |
 子供から大人まで皆で石を組み上げて作った壁。中央に神をまつっています |
 現在は女性たちが伝統技術の習得する際などに使用 |
 祭りや行事が行われる集落広場は周辺8部族の集いの場。中央に火をくべる場所も |
 集落の伝統の技術を学ぶ青年会所は女人禁制。女性はほかの集落へ嫁ぐこともあるため、技術の持ち出しがないように、とのこと |
原住民の教えを学べる場所:獵人学校

男性が技術伝承に使用する男生工房
太麻里にある拉労蘭集落もまた、台風の被害で苦労した集落の1つです。作家である撒可努(アーロンロン・サキヌ)さんが生まれ故郷であるこの地に「
獵人学校」を設立したのは2004年のこと。大自然と共に暮らし、そこから生きる知恵を学ぶための場として、原住民文化の伝承のほか、集落の青年たちのコミュニティー、また国際文化交流の拠点として開かれています。
ちなみに撒可努さんの作品は小学校の教科書にも登場するほど有名です。(なんと小学生ナビでも知っていたくらい)本屋さんでも売っていますので、興味のある方は見てみてくださいね。
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「獵人(狩人)」とはパイワン語で「自然と通じ合える人」という意味 |

「獵人学校」代表の撒可努さん
2016年、この地を襲った台風は「獵人学校」にも甚大な被害をもたらしました。飛ばされてしまった建物、中断されてしまった活動……そんな時手を差し伸べてくれたのが「台湾好基金会」でした。彼らの協力を得て再建した家屋や工房、これで再スタートと思いきや、非情にも2019年の火災で再び振り出しに……。それでも熱い夢を持って前進する撒可努さんと集落の人々。現在も一部の建物は再建中ですが、音楽会やトライアスロンといったイベントを通じ、「獵人学校」の活動は続いています。
ちなみに集落内の移動は軽トラックの荷台に乗って!台北ではできない貴重な体験をさせてもらいました!
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再建に向けた木彫りを細工中 |
原住民アートを体感できる場所:饒愛琴伊命工作室
山の中にぽつんとあるのが、アーティスト伊命さんと饒愛琴さんご夫婦の工房です。
 山をくねくねと上った先にある入り口に立つ看板 |
 さらに小道をてくてくてく…… |
 道の途中には果物もいっぱい!これは釈迦頭~♪ |
この地で生まれ育ったプユマ族の伊命さんは流木アートを制作。大自然から発想を得たダイナミックな作品や原住民たちの伝統を感じられるナイフなどが並びます。
 作業をする伊命さん |
 ユニークな表情をした伊命さんの作品 |
 こちらはRelaxがテーマ |
一方の愛琴さんは台北で雑誌やポスター、CDなどを手掛けるデザイナーでした。都会暮らしに疲れ、旅に出たこの地で伊命さんと恋に落ち、定住。絵画や自然素材を活かした立体アートを手掛けています。2010年頃からはモザイクアートも始め、工房の壁にもその美しい作品を見ることができます。
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愛琴さんの工房に並ぶ作品 |
この大自然を感じられる工房は、2016年の台風ではすべてが飛ばされてしまったと言います。窓ガラスは割れ、内部はぐちゃぐちゃ……。幸い、昔ながらの開放式の建築であったため、骨格自体は難を免れたそうですが、ひどい惨状に涙したそうです。
 倒壊は免れたという伊命さんの工房。広々としていて開放的~! |
 愛琴さんの工房のテラス。ここで星空を眺めながらワインの飲むはサイコー!だとか |
当時はすべてが飛ばされてしまったという海まで見下ろせるそれぞれの工房。自然に泣かされることもあるけれど、大地と対話しながら作品が生まれるんだろうなぁ…… |

かつての住まいをカフェに。2階が愛琴さんの工房。壁画のモザイクアートはもちろん愛琴さんのお手製
辛い過去を笑顔で語る2人。そんな苦労を乗り越えて2020年7月、伊命さん待望のカフェをオープンしました。ここでは台東大南産のコーヒーや自家栽培のフルーツを使ったフルーツジュースなどがいただけます。
そして、何よりのごちそうは大自然と伊命さん&愛琴さんとのおしゃべり……。ご夫婦の作品と笑顔に会いに来ませんか?
 伊命さん&愛琴さん |
 ご家族の住まいは2人の共同作品に……♡ |
日本統治時代の砂糖工場をリノベーションし、アート&カルチャースポットとして運営しているのが「台糖台東廠文創区」です。広大な園内には、さまざまなアーティストの工房やショップがあり、原住民たちが作る工芸品やグッズを実際に手に取り、選ぶことができます。台東らしいお土産としてもぴったりです。
※下記のほかにも各種ショップ・カフェなどがあります
 刺繍が得意な「卡塔文化工作室」の林秀慧さん |
 鮮やかな色で持てば気分もアガりそう♪ |
 作品について語る阿水さん |
 木目の美しさが映える手作り家具 |
 どこか愛嬌のある木彫りの置物 |
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窓の外に気持ちの良い風景が広がるカフェ |
■台糖台東廠文創区(台糖台東廠文創區)
台東県台東市中興路二段191号
(08)922-7720
原住民パフォーマンスを体感できる場所:布拉瑞揚舞團 BDC

BULAREYAUNG DANCE COMPANY(B.D.C)

これまでの想いを身振り手振りを交えて語る布拉瑞揚さん
同じく「台糖台東廠文創区」の一画に、世界的著名ダンサー・布拉瑞揚さんが旗揚げしたダンスカンパニー「布拉瑞揚舞團 BDC」 の稽古場があります。布拉瑞揚さんは嘉蘭集落出身のパイワン族の振付師で、台湾初のプロ舞踊団として知られる「雲門舞集」でダンサーとして活躍後、台湾は元よりニューヨークのマーサ・グラハム・ダンスカンパニーなど世界を股にかけ、数々の作品を手掛けてきました。
そんな彼が故郷に戻り、古巣の「雲門舞集」や地元の「鉄花村」などの協力の下、故郷の子供たちのために「B.D.C」を旗揚げしたのは2014年のこと。しかし程なくして台風が稽古場を襲います。壊滅的な惨状の拠点の再建に力を貸してくれたのが「台湾好基金会」をはじめとした多くの人々。彼らの作品「漂亮漂亮Colors」は、この時の経験からインスピレーションを得て生まれました。
設立から丸5年を迎えた2020年、これまでの6作品を携えて、9月に台東文創聚落、11月に台北雲門劇場で記念公演を行います。この機会に彼ら のパフォーマンスに触れてみてはいかがですか?チケット情報は下記公式サイトをご覧ください。
 アミ族・プユマ族・パイワン族・ブヌン族……団員達の多くが地元台東出身 |
 愛弟子たちの演技に思わず笑みをこぼす布拉瑞揚さん |
 稽古場に紛れ込んだワンコも見学中。ほっこり♡ |
原住民音楽に酔いしれる場所:鐵花村音樂聚落

祝・鉄花村10周年~!!!
今や台東観光に欠かせない「鐵花村音樂聚落(鉄花村)」は、廃墟だった台鉄宿舎を「台湾好基金会」が中心となって再生させた東部音楽の拠点です。地元のアーティストはもちろん、伍佰、蘇打綠、盧廣仲といった台湾内外のアーティストたちも、このステージで歌声を響かせています。
 カーン、カーン♪村長が叩く鐘がライブ始まりの合図。「上課啦~!(授業ですよ~!」 |
 巴奈さんのライブでは、巴奈さんが先生のように歌を教えてくれて、会場みんなで大合唱♪楽しい~~~!!! |
 最後は輪になって原住民のダンスを見よう見まねで踊る、踊る、踊る!どの顔も笑顔 |
 風を感じながらゆる~い気分でライブを楽しもう!ワンコも客席やステージをうろうろして、どこかまったり。思わず体がリズムを刻み、笑顔がこぼれるはず |
 アミ族語の「鹹豬肉(SILAW)」から命名したというKASILAWのライブ |
 鉄花村のステージと客席は出演アーティストによって異なる姿で組み立てられるんだとか。おもしろ~い! |

熱い想いを語る台湾好基金会の柯文昌董事長
そんな「鉄花村」は八八水災時に、嘉蘭集落出身の歌手・胡德夫さんや歌手・巴奈さんらが災害復興チャリティーイベントを行なったのをきっかけに誕生しました。とりわけ台東に恋した台湾好基金会董事長・柯文昌氏の「彼らの故郷で、彼らの得意なことや好きなことをやり続けて欲しい」という想いが設立へと結びついたのです。
 「民謡の父」として知られる胡德夫さん |
 ステージで熱唱する巴奈さん |
2020年7月、満10周年を迎えた「鉄花村」。これまで通り原住民の歌声が楽しめるステージや地元アーティストの作品が手に取ることができるマーケットを楽しめるのはもちろん、園内には新たに「鉄花好店」もオープンしました。こちらはかつて台北にあった「台湾好店」の系列店で、台東の「好(good)」なグッズや「鉄花村」のオリジナル商品を扱っています。ステキなお土産が見つかりそう~♪
また10周年を記念して、新レーベル「台湾好音楽」を立ち上げ、年内にはCDを発売する予定です。Sumingら鉄花村を代表するアーティストが参加するというから期待大!そして、6月から始まっている10周年をお祝いするライブは今後も続きます。詳しいライブ日程は公式サイトからご確認ください。
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メンバーの多くがアミ族とプユマ族のハーフという發熱帶樂團も新レーベルに参加!明るいメロディーに思わず体が揺れるはず! |

始めて聞く歌でも自然と体が動き、ステージと客席と一体になれちゃう。そんな空気が「鉄花村」には流れてる!
■鐵花村音樂聚落台東県台東市新生路135巷26號
(089)343-393
【ステージ】20:00~22:00(日曜日は~21:30)
【鐵花小舖(鐵花吧&鐵花好店)】17:00~22:30
※↑いずれも月・火曜日休み↑
【休日マーケット】金18:00~22:00/土・日曜日17:00~20:00
https://www.facebook.com/tiehua/http://www.tiehua.com.tw/※ステージのパフォーマンス内容及び価格は上記ウェブサイトをご覧ください。
笑顔がいっぱいのパワースポット

台東に暮らす原住民たちの暮らしやアート、音楽に出逢えるスポットには、常に彼らの笑顔と笑い声があふれていました。それにつられて思わずナビも笑顔に……。
「獵人学校」の撒可努さんが引用した、「台風が過ぎ去れば新たなるスタートだ。風が多くのものを持ち去っていったが、さらに多くのものをもたらしてくれた。台風はチャンスでもあるんだ」という長老の言葉が印象的でした。

自然と共に生きる彼らは、たとえ自然に苦しめられたとしても、そこからまた何かを得て前に進んで行く……。行く先々で彼らが口にしていたのは、「台湾好基金会」をはじめとした多くの支援者たちへの感謝の声でした。思いやりがパワーとなって人々を笑顔にさせ、そしてまた別の誰かに元気を与える……。この旅でそんなことを感じたナビでした。
台東、笑顔いっぱいの原住民たちが集う場所。あなたも訪れてみてはいかがですか?ここに来れば、きっと元気になれるはずです。
以上、台北ナビでした。