強いメッセージ性を持つ新世代アーティストとベテラン勢が作り出す音楽を体感できたパフォーマンスにも大興奮♪

こんにちは、台北ナビです。
1990年の開催以来、台湾のみならず中華圏で最も栄誉ある賞とされる金曲奨(ゴールデン・メロディー・アワード/GMA)。33回目を迎える今年は、2万721点からノミネートされた175作品から、27の項目で最優秀賞が選ばれました。
今年の台湾は感染者数だけを見れば昨年よりも桁違いに多いのですが、ゼロコロナからコロナ共存へと方針転換したおかげで、予定通り7月2日に行われました。しかしながら会場は台北アリーナから高雄巨蛋(高雄アリーナ)に場所を移しての開催のため、ナビは引き続き台北の自宅からゆっくり視聴となりました。
新型コロナウイルス感染症陽性となり、やむなく欠席したノミネート者およびゲストもいた中、レッドカーペットに登場するスターを見に駆けつけたファンは、台北よりも多く見えるほどの盛り上がりを見せましたよ。
コロナ禍、世界情勢に心を痛めることも多い昨今ですが、音楽はどんなときでも私たちの心に寄り添い、時に元気や希望を与えてくれます。全ての音楽と音楽人に敬意を評しつつ、遅ればせながら金曲奨リポートをお届けします。
金曲奨の始まりを告げる華麗なるレッドカーペット
晴れ舞台を飾る、一段と華やかな各アーティストの姿を一挙に見られるのは、アワードならでは魅力ですよね。ですが、今年レッドカーペットの話題をさらったのは、なんといっても初司会に大抜擢された「YELLOW黃宣(ホアン・シュエン)」でしょう。共に司会を務めた客家語話者の「陳明珠(チェン・ミンジュー)」と原住民語話者の「黃宣」は、ゲストによって巧みに言葉を使い分けながら見事な采配を見せ、長年司会者として第一線で活躍する「陶晶瑩(タオ・ジンイン)」に「来年は授賞式の司会者になれる」と言わしめました。
 彗星の如く台湾音楽界に現れてわずか数年の「YELLOW黃宣」。その音楽性は高く評価されており、今年も華語男性歌手賞など3項目にノミネート。立板に水のような抜群のトーク力で司会者の才能も発揮しました |
 授賞式の司会者を務めるのは、歌手・俳優として幅広く活躍する「羅時豐(ルオ・シーフォン) 」 |
 近年、バラエティー番組でMCの才能を開花させた「炎亞綸(アーロン)」はプレゼンターとして参加。今年はコンサート開催したいそう |
 台湾が誇る人気司会者の「陶晶瑩」はプレゼンターとしての参加。メンズライクなスーツが素敵です |
 昨年、最優秀客家語アルバム賞を受賞したバンド「春麵樂隊(ChuNoodle)」は、今年も柄の大小リンクコーデが本当におしゃれ |

プレゼンターを務める「頑童MJ116」の面々。やはり3人揃うと存在感ハンパなし!
 音楽性だけでなく、スタイルも欧米規格の「9m88」。大胆に露出したお腹や脚でヘルシーな魅力全開!8月8日にセカンドアルバムを発売! |
 小Sこと「徐熙娣(シュー・シーディー)」は、ヴァレンティノのピンクPPコレクションからワンピースをチョイス。ピンクメイクも個性的! |
 プレゼンターの「孫盛希(Shi Shi/スン・シェンシー)」はテラコッタ色のドレスが決まっています |
 モノトーンにイエローの差し色が目を引く「壞特(?te)」。年末にリリース予定というニューアルバムは要チェック! |
 大人っぽいシックなスーツで登場した「持修(チー・シウ)」は、捲し立てる司会者二人に圧倒されたのか発した言葉は「加油(頑張れ)」のみ? |
 トリを飾ったのは美魔女の「陳美鳳(チェン・メイフォン)」。66歳にしてこの美貌!途中で上着を脱ぎ開いた胸元を見せる演出もさすが〜 |
 家族と一緒に姿を見せた「Kerekelj(沈昉禎)」は原住民語歌手賞、原住民語アルバム賞にノミネート |
 『《N1》那屋瓦一號作品』で原住民語アルバム賞にノミネートの「阿拉斯」、「曾妮」、「薛薛」、「真愛」、「Kivi」、「丁繼」 |

原住民語歌手賞ノミネートの「簡燕春」(中央)は、なんと自身の集落全員を伴ってきたとか。「黃宣」は流暢なアミ語でコミュニケーション
 原住民語アルバム賞ノミネートの「野東西(Wild Thing)」は、第33回金曲奨を記念して全員が彫ったというタトゥー「33」を見せてくれました |
 原住民語歌手賞ノミネートの「舞思愛」は、可愛らしい娘さんと仲睦まじくアカペラ披露。傍らにはマネジャーも務める夫の姿 |
 昨年同様真っ白な衣装の「Putad」と、「Sauljaljui(戴曉君)」のテラコッタ色の対比が一際目を引きます |

日本にもファンの多い「Suming(舒米恩・魯碧)」は原住民語歌手賞にノミネート。すっかり金曲奨おなじみですね〜
 登場するや大きな歓声が上がった「血肉果汁機(Flesh Juicer)」は台湾語アルバム賞にノミネート |
 台湾語男性歌手賞ノミネートの「蘇明淵」は、愛娘から「100満点のパパ」と言われガッツポーズ |
 ペアコーデで登場したのは、台湾語アルバム賞、台湾語女性歌手賞ノミネートの「江惠儀」とプロデューサーで恋人の「林唐鈺」 |
 台湾語女性歌手賞ノミネートのおなじみ「朱海君(ジュー・ハイジュン)」 |
 台湾語男性歌手賞ノミネートの「張伍」は、アルバムのプロデュースを手がけた「李思嘉」と一緒に登場 |
 台湾語女性歌手賞ノミネートの「賴慧如(ライ・フイルー)」 |
 台湾語男性歌手賞ノミネートの常連、「蕭煌奇(シャオ・ホアンチー)」 |
 台湾語女性歌手賞、台湾語アルバム賞ノミネートの「張涵雅(チャン・ハンヤー)」は、娘さんとお揃いのドレスが微笑ましいです |
 台湾語アルバム賞、編曲賞ノミネートの「百合花」。メンバーではないですが、デザイナー「陳念瑩」のファッションがアニメキャラっぽくてかわいい |
 昨年に引き続き客家語歌手賞ノミネートの「謝宇威(シエ・ユーウェイ)」はデビュー30年。10年以上共にしてきたバックバンドと一緒に |
 客家語歌手賞にノミネートの「黃宇寒(ホアン・ユーハン)」 |
 客家語歌手賞はじめ脅威の7項目ノミネートの「黃連煜(ホアン・リエンユー)」 |
 客家語歌手賞ノミネートの「徐世慧」。家族や友達を伴うアーティストが多い中、ピン登場もまた清々しいです |
 ファーストアルバムで客家語アルバム賞にノミネートの「彭柏邑」 |

「Haezee」は、抜群のスタイルを生かし大胆なカッティングが入ったセクシーな装い。お母さんを伴っての登場です
 地方の伝説や伝統文化、妖怪や神様を取り入れた歌詞が多い「裝咖人(Tsng kha lâng)」は、全員黒の衣装で登場 |
 白いフリンジがついたゴージャスジャケットを着こなすのは「雷擎(レイチンL8ching)」。マッチョぶりが一目瞭然 |

台湾民俗文化を取り入れた衣装がトレードマーク、ボーカルグループ賞ノミネートの「三牲獻藝」。頭上の人形は台湾の伝統信仰の神様です
 衣装のコンセプトについて「よくわからない」と答えるバンド賞ノミネートの「動力火車」。曲がかっこいいから没関係〜 |
 バンド賞ノミネートの「無妄合作社」。渋かっこいいビジュアルながら、話すと気さくな雰囲気 |
 ボーカルグループ賞ノミネート、「新寶島康樂隊」の一人排灣族(パイワン族)の「陳世隆」 |

3度目のバンド賞ノミネートとなる「TRASH」は、全員赤い下着を着用して今日に臨んだそう
 バンド賞ノミネートの「13月終了(Undecimber Fin)」。変わったバンド名は、モスバーガーの店内で思いついたのだとか |
 「内なる探求」を意味する『Into Innerverse』というアルバムでバンド賞ノミネートの「I Mean Us」 |

ボーカルグループ賞ノミネートの「恐龍的皮(The Dinosaur's Skin)」。トレードマークの恐竜の被り物とユニークな動きで会場を沸かせます
 ボーカルグループ賞ノミネート、男女デュオ「VH(Vast & Hazy)」 |
 高雄出身のラップグループ「影子計劃(Shadow Project)」はボーカルグループ賞ノミネート |

奇抜な衣装の面々は台湾語ロックで人気の「美秀集團(Amazing Show)」。バンド賞、MV賞のダブルノミネートで、後方にはひっそりMV監督の林毛も
 「如果可以」で年度楽曲賞ノミネートの「韋禮安(ウェイ・リーアン)」。「如果可以」は台湾華語のほか日本語(赤い糸)、韓国語(만약)と3バージョンもあるんですよ~! |
 華語男性歌手賞はじめ4項目ノミネートの「盧廣仲(クラウド・ルー)」は、ディオン・リーのグリーンのスーツにニットをコーデ(ちなみに蕭煌奇と衣装が被りました~!)。袖口からのぞく腕時計もおしゃれ! |

年度楽曲賞ノミネートの「茄子蛋」。すっかり金曲奨賞常連になりました
 華語女性歌手賞ノミネートの「Karencici」は、ハイカラーのヘアとレモン色の衣装がマッチ |
 華語女性歌手賞はじめ8項目にノミネートの「蔡健雅(タニア・チュア/ツァイ・ジエンヤー)」は、鮮やかなブルーのドレスをまといママと登場 |

一際大きな歓声を浴び、目立ちまくっていたのは、年度楽曲賞、アルバムデザイン賞ノミネートの「黃明志(Namewee)」と「陳芳語(キンバリー・チェン)」と「パンダマン」!
 華語アルバム賞、アルバムプロデュース賞ノミネートの「李權哲 (ジェリー・リー)」は異素材の暖色系コーデがニクい |
 華語男性歌手賞ノミネートの「馬念先(マー・ニエンシエン)」は、まったく普段着で、逆に存在感を感じさせます |
 フィーチャリングした「ØZI」の「跑馬燈 DEATH TRIP」で年度楽曲賞とシングルプロデュース賞ノミネートの蛋堡こと「杜振熙」 |
 ギタリストの「小池龍平」や映像監督の「二宮宏央」ら日本人ともコラボした『尋找你』で、華語アルバム賞ノミネートの「以莉高露(イリー・カオルー)」 |
 金曲奨常連の「魏如萱(ウェイ・ルーシュエン)」。今年も安定の年度楽曲賞、華語アルバム賞、華語女性歌手賞ノミネートです |
 「阿妹(アーメイ)」や「蔡依林(ジョリン・ツァイ)」のプロデューサー「阿弟仔」を筆頭とする審査員の面々。意外に若い世代が多いんですね |
 カラフルな軍団は「Robot Swing」。編曲賞にノミネート |

毎年キテレツな衣装で楽しませてくれる「HUSH」。今年は両腕の大きなリボンからロングトレーンが伸びたこれまた艶やかな装いです
 インストゥルメンタル部門でアルバム賞、アルバムプロデュース賞、作曲賞、アルバムレコーディング賞にノミネートの「Alan Kwan」 |
 「黃連煜」とデュエットした「滅人山」で客家語に挑戦した「Sangpuy(桑布伊)」。年度楽曲賞ノミネートです |
 小麦色の肌に鮮やかなイエローが映える、作曲賞ノミネートの「艾怡良(アイ・イーリャン)」 |
多様性を増す台湾ミュージックシーン、話題のあの曲は果たして?

「茄子蛋」、おめでとう!!
今年は例年と順序を変え、その年を象徴する「
年度楽曲賞」の発表からスタート。8組のノミネート曲から、映画『當男人戀愛時(君が最後の初恋)』の主題歌でもある「
茄子蛋」の「
愛情你比我想的閣較偉大」が選ばれました。
そういえば映画に主演した「邱澤(ロイ・チウ)」と「許瑋甯(アン・シュー/ティファニー・シュー)」が結婚したこともあって、昨年末は巷でもガンガン流れていましたね〜!

簡潔な受賞コメントとビートボックスが逆にインパクト大
受賞の決め手は「市場のテイストをうまく捉えたメロディーとアレンジで、メロディーの美しさだけでなく、質の高い作品に仕上がっている」とのこと。たっぷりの風刺を込めた歌詞とMVで大きな話題を呼び本命視されていた「黃明志」&「陳芳語」の「玻璃心」、映画『月老(月老 ~また会う日まで~)』の主題歌でもある「韋禮安(ウェイ・リーアン)」の「如果可以」は、最終選考に残りながらも僅差で受賞を逃しました。
 台湾を代表する司会者として人気の「陶晶瑩」と「小S」がプレゼンターとはなんとも贅沢! |
 しかも「小S」の実姉「大S」の夫「ク・ジュンヨプ」(韓国のアイドルデュオCLONのメンバー)までサプライズ登場! |
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「陶晶瑩」「小S」「ク・ジュンヨプ」と一緒に大喜びの「茄子蛋」。喜びすぎて阿德のネックレスがずれていたことに、誰よりも早く気づきとっさに直してあげた「ク・ジュンヨプ」の好感度爆上がり中! |
強いメッセージ性が際立つ新世代のアーティスト

「珂拉琪(Collage)」が新人賞を受賞!
続いて発表されたのは「
新人賞」です。日本でも人気を博した台湾ドラマ「時をかける愛」に主演した「許光漢(グレッグ・ハン)」もノミネートされましたが、今年は男女二人のユニット「
珂拉琪(Collage)」が受賞しました。
ロック、VOCALOID、メタルなどの要素を取り入れた『MEmento‧MORI』は、その幅広いジャンルだけでなく、白色テロや日本統治時代など歴史的背景に台湾語、日本語、客家語、英語、原住民語をミックスした多彩な表現性が高く評価されました。

新人賞受賞者は金曲獎の舞台で生歌を披露します。その歌声、世界観に一気に引き込まれます!
「私たちの歌を通して、(台湾が)どんな歴史をたどってきたのか皆が考えるきっかけとなり、自分なりの答えを見つけることが重要。ポストコロニアル時代、私たちの創作が皆さんのアイデンティティのヒントとなり続けることを願います。私たちが作ろうとしている音楽と同じように、自由で多様な存在、それこそが本来一番美しいのです」と語ったギターの王家權の受賞スピーチが非常に印象的でした。
 昨年の最優秀新人賞者・「懷特(?te)」の話し方は、彼女の曲と同様にアンニュイかつ癒やしモード |
 アミ族出身というメインボーカルの「夏子」は、アミ語と日本語の歌詞を担当 |

他メンバーが謙虚なスピーチをする中、ギターの「阿霖」は「当然の結果です。とても努力したのだから」という俺様コメントで場を盛り上げました
「最優秀バンド賞」は台中出身のメタルバンド「血肉果汁機(Flesh Juicer)」が受賞。各バンド僅差の中、ニューメタルにポップスやヒップホップの要素を組み合わせたサードアルバム『GOLDEN 太子 BRO』が一歩リードした形です。
 プレゼンターを務めた「董事長樂團」。安定の渋かっこよさ |
 ここ数年レベルが上がりまくっている台湾のバンド!今回は僅差で「血肉果汁機」が受賞 |

「陳昇」は来場せず、「阿VAN」、「黃連煜」の二人だけが登壇
そして「
最優秀ボーカルグループ賞」は、「
陳昇(ボビー・チェン)」、「
阿VAN(陳世隆)」、「
黃連煜(ホアン・リエンユー)」のベテラン勢がタッグを組んだ「
新寶島康樂隊(New Formosa Band)」が、前評判の高かった「動力火車」をおさえて受賞しました。
ベテラン勢の受賞が相次いだ各言語部門
 ほぼ台湾語で前振りしたプレゼンターの「陳美鳳」と「蔡昌憲」 |
 本業は大手企業のエンジニアという「江惠儀」。趣味として自費リリースしたアルバムで受賞というから驚きです |
台湾語部門では、『空』の「江惠儀」が二度目の「最優秀台湾語女性歌手賞」を受賞。
恋人でプロデューサーの「林唐鈺」は「今回受賞したらプロポーズ」と周囲から勧められていたそうなので、おめでた続きになるかもしれませんね。

「王俊傑」は「台湾語を話す人が多い高雄で受賞できたのは格別です。とても嬉しいです」と高雄にもラブコール
「
最優秀台湾語男性歌手賞」は、「ピアノの詩人」との呼ばれるシンガー・ソングライターの「
王俊傑(ワン・ジュンジエ)」。
アルバム『
看無』はジャズと流し風の要素を組み合わせ、「王俊傑」風味のカクテルのような仕上がりに。プロデューサー「趙家駒」のエスコートで登壇した視覚障害のある「王俊傑」は、「私の目は見えませんが、それらを全て心に込めて、これからはより真剣に歌います」と述べました。

最優秀アルバムデザイン賞も受賞した「百合花」の『不是路』
「
最優秀台湾語アルバム賞」は、「
百合花」の『
不是路』が受賞。
「百合花」は、伝統的な北管音楽にチャルメラやドラ、管弦楽器などを組み合わせているのが特徴で、若い世代の台湾語楽曲といえるでしょう。昨今は、「五月天(Mayday」や「伍佰(ウーバイ)」らとはまた一味違った台湾語ロックやヒップホップも若い世代を中心に存在感を強めており、台湾語楽曲といえば演歌かバラードだった時代とは隔世の感があります。
原住民語部門では、「簡燕春」が「最優秀原住民語歌手賞」を受賞。81歳で初リリースしたファーストアルバムが今年初受賞という快挙です。さらに御年83歳にして、同賞の受賞最高年齢を更新しました。
原住民古謡を伝承する彼女の『Ira...a micekor 靜靜地等待著』には、アミ族の太巴塱集落200年来の古謡が収録されているそうです。「古謡の母となり、次世代につなぎたい」と強い意志が感じられる受賞スピーチに、「何かを始めるのに遅すぎることはない」と励まされた方も多いのではないでしょうか。
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プレゼンターは、83歳の「胡德夫」と昨年の最優秀年度アルバム賞受賞の「Sangpuy(桑布伊)」。彼らの暮らす土地の風景が見えてくるような、「胡德夫」と「Sangpuy」の圧倒的な歌唱力に脱帽。ちなみに以前「胡德夫」はサプライズで台北ナビのために1曲歌ってくれたことがあるんですよ~!(写真をクリックすると動画に飛びます) |

「簡燕春」もアカペラ大サービス。金曲奨は新人賞以外に受賞者パフォーマンスがないので、歌ってくれる率の高い原住民語部門は、ナビが金曲奨で楽しみにしている授賞の一つです
一方、「最優秀原住民語アルバム賞」を受賞したのは、「陳建年」の『pongso no Tao』。このアルバムでは、第二の故郷である台湾の離島・蘭嶼島で警官をしていたときの気持ちや生活が描れています。
これまで数えきれないほどの受賞を果たし、もはや大御所感たっぷりの「陳建年」ですが「ノミネートされている後輩たちの音楽は皆素晴らしい。彼らの曲を聞いて自分は及ばないと感じていたので、受賞できたのが不思議です」との謙虚なコメントから、音楽に対する誠実さが感じられました。

「陳建年」だけでなく、プレゼンターの「胡德夫」と「Sangpuy」も卑南族(プユマ族)という偶然の3ショット
そして今年大きな存在感を示したのが、『滅人山』で「最優秀客家語歌手賞」、「最優秀客家語アルバム賞」を受賞した「黃連煜」です。
「黃連煜」はこのほか審査員賞、さらには「寶島康樂隊」で最優秀ボーカルグループ賞を合わせ、4項目受賞を果たしました。受賞理由は「言語や民族の境界を越え、歴史的な深みと同時に前進する強さがある」ことで、傑出した表現力が高く評価されました。
「黃連煜」は「かつて台湾は移民さえも恐れる場所、つまり『滅人山』でした。開拓した祖先に感謝しつつ、子孫である我々は唯一の国家を守ります。いつどこから来たのであれ、母語が何語であれ、私たちは皆原住民です」と、強い口調で語りました。
 プレゼンターの「春麵樂隊」は、ほぼ客家語で挨拶 |
 「アンズセー」と、開口一番客家語で感謝を示す「黃連煜」 |
その他各部門の受賞者はこちら!
「最優秀作曲賞」は、昨年に引き続き「HUSH」が「衣櫃歌手」で受賞!「五月天(Mayday)」の「瑪莎」と共同制作した曲だそうです。我らが「盧廣仲(クラウド・ルー)」の「雨時多雲偶陣晴」や、「小宇(シャオユー)」こと宋念宇の「等妳想起我」は残念ながら受賞を逃しました。
「最優秀作詞賞」は「88BARS」の「熊仔」。その他、「最優秀シングルプロデュース賞」は「以上皆非」の「徐佳瑩(シュー・ジャーイン)」と「陳君豪」、「最優秀アルバムプロデュース賞」は『愛情一陣風』の「李權哲」、「編曲賞」は「珂拉琪」のボーカル「夏子」のソロナンバー「fuis 星星歌」で「黃少雍」、「最優秀MV賞」は「余佩真」の「甘吧爹ㄋㄟ(頑張ってね)」を手がけた監督の「蔡宜豫」が受賞しました。「甘吧爹ㄋㄟ」は写真を切り貼りしたようにして作られた映像がとても新鮮です。
インストゥルメンタル部門の「最優秀アルバム賞」は、「侯志堅」の『〈修行〉電影原聲帶《修行》』、「最優秀作曲賞」は「On Starboard 星板」の「武勇恆(Yongheng Wu)」。日本人ギタリストの「大竹研」は惜しくも受賞を逃しましたが、金曲奨では常連となり、台湾音楽界で確固たる地位を築いていることがうかがえます。
 プレゼンターの「A-Lin」は、黒髪ストレートでイメージチェンジ |
 プレゼンターを務めた上に受賞まで果たす大忙しの「HUSH」 |
 熊仔こと「熊信寬」は、登壇するやトロフィー撮影するなどフリースタイル全開 |
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「盧廣仲」や「阿爆」らの編曲も手がける実は凄腕の「黃少雍」は、リコーダーを吹いて会場を笑わせました。実はこれ、「盧廣仲」と共にノミネートされていた楽曲「狂迪」でこの賞を取ったら、舞台上で一緒にリコーダーを吹こうと約束していたからなんです。共に賞は取れなかったけど、ほかの賞を取ってね!と励ます演奏を見た「盧廣仲」はとっても嬉しそう!このチームの仲の良さを見ているだけで幸せな気持ちになるのはナビだけ? |
 発表された瞬間、思わず口元を手で覆い、驚きを見せた「徐佳瑩」 |
 ノミネート、パフォーマンス、プレゼンターと一人三役。大忙しの「盧廣仲」 |
 4年前の新人賞にもノミネートされていた弱冠25歳の「李權哲」。今後の活躍が楽しみです |
 プレゼンターの「炎亞綸」と「持修」。進行するのは「炎亞綸」で、またもや持修は復唱か相槌のみ。もしやお約束? |
 レッドカーペット登場時、司会者から「ガンバッテネ(甘吧爹ㄋㄟ)」と連呼されていました |
 「才能ある人たちと共に仕事ができ、ノミネートどころか受賞もできました。音楽に携われて幸せです」とスピーチした最優秀アルバム賞の「侯志堅」 |
金曲奨ならでは!人気アーティストによる名曲カバーメドレー
賞レースの結果も気になりますが、金曲獎といえばやっぱり人気アーティストによるパフォーマンスも大注目ですよね。この日限りの貴重なパフォーマンス、チェック済みですか?見逃した~という方、ご安心を!YouTubeで公開されていますよ。
下の写真をクリックすると、各ライブへ飛ぶようにリンクをつけています。時間のある時に見てみてくださいね!
 オープニングは司会者の「羅時豐」と「Karencici」という意外すぎる組み合わせ |
 「斯斯」という風邪薬のコマーシャルで「感冒用斯斯(ガンマオヨンスッスー)」と歌っている「羅時豐」が、カプセルに乗って、『Can You Feel The Love Tonight』を熱唱! |
台北ナビも応援している「宇宙人」と『要去高雄』をバスの中で熱唱もしています!必見!! |

「徐佳瑩」、「艾怡良」、二人の美声が紡ぎ出す鳥肌ものの素晴らしいハーモニー!
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「Matzka(瑪斯卡)」と「頑童MJ116」の「大淵MUTA」は、今年のテーマ「熱」にかけ、ラテンのノリでホットな女性ダンサーと競演 |
 真っ赤な衣装に身を包んだ「魏如萱」と「米莎」は、「末路狂花」、「山鬼」、「管他什麼音樂」など二人の曲などをメドレーで熱唱 |
 「旺福」は、今年他界した台湾語歌手・「文夏」へのオマージュとして、ディスコアレンジした「愛你管」、「星星知我心」を熱唱 |

「盧廣仲」は、亡くなったミュージシャンを偲び、特別貢献賞のナビゲーターを務める「金智娟」の「為何夢見他」をカバー
 「林宥嘉」は、「当時を知るお父さんお母さん世代には感動を、子どもたちにはサプライズを」というコンセプトで、「おどるポンポコリン」、「となりのトトロ」の台湾華語カバーなど、子ども時代の流行歌を披露し大好評。パパになった「林宥嘉」の今まで見られなかった魅力にノックアウトされたファン多し! |
 「9m88」は、「Karencici」の「Do Do Do」、「蔡健雅」の「出走」、「Faye詹雯婷」の「焚風」、「魏如萱」の「HAVE A NICE DAY」など女性ノミネート者の曲を歌い、会場は拍手喝采に |
圧倒的強さを見せた華語部門ベテラン勢
いよいよ大詰め華語部門では、「盧廣仲(クラウド・ルー)」、「馬念先(マー・ニエンシン)」ら台湾勢をおさえて、中国の「崔健」の『飛狗』が「最優秀華語男性歌手賞」に。あいにく本人の来場はなく、代理人がトロフィーを受け取りました。「中国ロックの父」といわれる「崔健」ですが、金曲奨の受賞は初めて。審査員曰く、華語男性歌手賞の選考は最も難しかった一つで、3回目の投票でやっと決まったとのことです。「30年以上情熱と創作のエネルギーを持ち続ける「崔健」の華語市場への影響力は大きい。「黃宣」は直感に優れ才能あふれる新世代のミュージシャンだが、不運にも時代を代表する「崔健」が相手だった」と、「崔健」が一票差で「黃宣」に優った理由を述べました。

トロフィーを手にして歓声を上げた「蔡健雅」ですが、名実ともに歌姫の貫禄たっぷり
そして「
最優秀華語女性歌手賞」および「
最優秀華語アルバム賞」は、『
DEPART』でシンガポール出身の「
蔡健雅」が受賞を果たしました。4度目となる華語女性歌手賞受賞は、最多受賞を誇っていた「阿妹」を追い越したそうです。さらには「
最優秀年度アルバム賞」も奪取し、「
アルバムボーカルレコーディング賞」と合わせ計4項目を制しました。
「蔡健雅」と同様、「黃連煜」も4項目受賞を果たしていますが、年度アルバム賞を制したという点から、今年の金曲奨の頂点に立ったのは「蔡健雅」といえるでしょう。
審査員曰く、「蔡健雅」のアルバムは全て素晴らしい出来だが、今回特に原点回帰したことが評価につながった」とのこと。一回目の投票で過半数を獲得したことから、圧倒的勝利だったことがうかがえます。
コロナ禍の影響を受け、自宅スタジオで作曲からアレンジ、ギター演奏のレコーディングまでしたという『DEPART』ですが、その結果テクニカルな要素を封印し、本来の音色を体現することにフォーカスでき、より彼女の音楽性が突出した形になりました。「蔡健雅」は受賞スピーチで「音楽にはたくさんの可能性があります。音楽家は皆ストーリーテラーで、呼吸する空気、目にした全てのディティールや物語を書き留めます。いつか宇宙人が来て、私たちの音楽を聴いたとき、ここで何が起こったのかわかるように、あらゆる物語を書きたいです」と述べました。
 華語女性歌手賞のプレゼンターは「蕭亞軒(エルバ・シャオ)」。サプライズゲストだったため、登場すると同時に一際大きな歓声が |
 華語男性歌手賞のプレゼンターは「頑童MJ116」。受賞者の「崔健」は残念ながら欠席でした |
 華語アルバム賞と年度アルバム賞のプレゼンターは「田馥甄」と「蛋堡」。二人の衣装のテイストが、音楽と同様にかけ離れているのが個人的にツボ |
台北ナビ的総括!

審査員長の「阿弟仔」
審査員長の「
阿弟仔」は「
今回は若い人もいればベテランもおり、音楽ジャンルも多様性を極め、審査員間で共通の落とし所を見つけるのが難しかった」と総評を述べました。年々多様性が広がると同時にレベルも高くなっているのは確かで、才能をとりこぼさないためという理由から、今年はノミネート者が増えた賞も多々あります。
しかし実際の受賞結果は、華語部門の「
蔡健雅」と「
崔健」、原住民語の「
陳建年」、台湾語部門の「
王俊傑」、客家語部門の「
黃連煜」と、ベテラン勢の受賞が目立ちました。もちろんベテラン勢の受賞は多様性を否定するものではなく、これまでの成功に甘んじることなく更なる可能性に挑戦し続けている証左でもありますが、多くのニューフェイスにスポットライトが当てられたここ数年の受賞傾向とは一線を画し、台湾ミュージックシーンを支えてきたアーティストへのリスペクトが優った印象です。
一方で「珂拉琪」、「裝咖人」、「三牲獻藝」、「血肉果汁機」といった若い世代を中心に、台湾の歴史や風俗、伝統文化の要素をふんだんに取り入れ、強いメッセージ性を持つアーティストが増え、さらにそれを支持するムーブメントも感じられます。
「周杰倫(ジェイ・チョウ)」、「阿妹」、「五月天」ら圧倒的才能と人気を誇る世代が長年第一線で活躍し、それを超える次世代アーティストが中々出てこなかった時代もありましたが、現在状況は全く変わりました。

台湾だけでなく、日本や韓国、欧米の音楽を幼いころから自由に聴ける環境で育った若い世代のアーティストは、想像を超えるレベルでそれぞれの音楽世界を構築しており、新たな驚きをもたらしてくれます。華語音楽を応援する一個人から見ると、台湾の音楽は、中華圏に留まらずもはや世界で通用するレベルに達しているといっても過言ではありません。台湾で活動するアーティストたちが、次はどんな音楽を聴かせてくれるのか、その期待は年々高まるばかりです。
以上、台北ナビ(二瓶里美)でした。
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